「奈良の木」を学術的に見る

優れた素材、確かなデータ

強く上質であるといわれる「奈良の木」。具体的には、どのように優れた特徴を持っているのでしょうか。奈良県森林技術センターによって「奈良の木」を科学的なデータで解析したさまざまな研究内容をご紹介します。

※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。

吉野林業と吉野材について

吉野林業地域とは、吉野川の上流域にある川上村、東吉野村、黒滝村の3村を指しますが、吉野郡全体を指す場合もあります。土壌は保水と透水性が極めて良好であり、年間雨量は2000mm以上、年平均気温は 14°C、冬期の積雪は30cm以下という林木の生育に最適の条件を備えています。

吉野林業の特徴は、極端な密植と弱度の間伐を数多く繰り返して高伐期とする施業です。かつては酒樽、樽丸の生産を目的としていたため、年輪幅が狭く、均一であることを尊重したと言われています。植栽本数は、最近では7000~8000本/ha程度で、スギ、ヒノキを混植して単純一斉林の成立を避けてきました。スギの場合、30年位まで保育を目的とした間伐を行い、70年頃までは数年~10年ごとに、それ以後も10~20年ごとに間伐を続けていきます。

このような密植、間伐に加えて技打ちを励行し、集約的な施業を行った結果、無節、完満通直、本末同大、年輪幅が均一という、いわゆる吉野材としての名声を馳せ、銘木、磨丸太という特殊な材を産出してきました。

このような優れた技術と自然環境の結果である材質の良さに加えて、渋抜き (葉枯らし) による色の良さ、即ち、吉野杉の心材独特の淡紅色によって、吉野材として市場で珍重されています。

木造住宅には、さまざまな種類の木材が使用され、主な部材としては、柱や梁、土台などの構造材、根太や垂木、間柱などの羽柄材、床組や屋根組に用いる合板などの下地用の面材があります。これらの使用量は、住宅工法、施工方法、壁や床面の構造様式によって異なりますが、平均的な延べ床面積128m²、約39坪の住宅1棟当たりでは23.7m³の木材が使用されています。

図4に木材使用量を示しますが、構造材が6割以上を占め、なかでも断面の大きな梁、桁が最も多く、次に断面の小さな羽柄材や柱が続きます。吉野スギ、ヒノキは、構造材と内装材に利用されています。かつては、木造住宅の和室には高級材が求められ吉野材が用いられていました。最近では、和室の減少とともに吉野材の用途も減少してきましたが、構造材の梁、桁や床材のフローリング材などに使用されています。

No.2「高い強度性能」

No.2「高い強度性能」

ページ上部へ