「奈良の木」を学術的に見る

優れた素材、確かなデータ

強く上質であるといわれる「奈良の木」。具体的には、どのように優れた特徴を持っているのでしょうか。奈良県森林技術センターによって「奈良の木」を科学的なデータで解析したさまざまな研究内容をご紹介します。

※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。

奈良県産スギ・ヒノキを用いた不燃材開発「エフネン65S」

 森林技術センターは、県内桜井市の(株)ヨコタニと共同で、木材の不燃化に関する研究を実施し、県産スギ・ヒノキ材を用いた不燃木質材料を開発しました。 (株)ヨコタニが「エフネン65S」という商品名で既に製造販売を行っており、最近では大型の建造物での施工実績も増えてきました。

 平成12年に建築基準法の一部改正があり、それ以前はコンクリートやレンガ、瓦、鉄鋼、ガラス、金属板など、誰が見ても燃えない材料のみが不燃材料として認められていましたが、この改正により、木材のような従来燃える素材であっても、一定の基準を満たしていれば、国土交通大臣の認定を受けた上で、不燃材料として使えるようになりました。

不燃材料の認定基準
 建築基準法の定めでは、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分の間に、⑴燃焼しないこと、⑵防火上有害な損傷を生じないことおよび、⑶避難上有害な煙又はガスを発生しないこととなっています。このうち、⑴と⑵は、写真1にあるコーンカロリーメータという装置を使って燃焼試験を行い、発熱量の測定や亀裂等の発生状況を確認します。⑶については、ちょっとかわいそうですが、マウスを使った実験をします。これらの試験で基準値を満たし、国土交通大臣の認定を受けたものが、不燃木材で、現在30件を超える認定がなされています。

不燃木材を作る方法
 ごく簡単に言いますと、不燃木材は、リン酸系薬剤やホウ酸系の薬剤、あるいはそれらを組み合わせたものを水に溶かし、それを木材中に圧力をかけてしみ込ませた後、乾燥させて作ります。元来燃える材料を不燃化するわけですから、かなり濃度の高い溶液を作って、それを木材中に充分含浸させることはかなり難しく、その詳細はほとんどの場合、企業秘密となっています。

不燃木材の課題
 ところで、これまでの不燃木材には、致命的な欠点がありました。それは湿気やすい薬剤を使っていたために、空気中の湿気を吸って、その水分で薬剤が噴き出したり(写真2)、不燃木材の表面で固まったりする(写真3)トラブルが絶えませんでした。

不燃木材の欠点解消に向けて
 そこで私達は、薬剤の吸湿性を極限まで抑え、薬剤の噴出しなどが起こらない不燃木材を作ることを目指しました。それは困難を極めましたが、我が国で(おそらく、世界でも)初めて吸湿性が低い不燃木材を作ることに成功し、最近ではその品質が広く認められるようになりました。

不燃材料を使わなければならない場所は、映画館やホール、駅など不特定多数の方が利用する施設が主ですので、現時点ではそのような公共的な場所での利用(写真4〜7)がほとんどですが、これからはより安全な居住空間を求めて、マンションや、戸建住宅にも利用が拡大するのではと予想されます。

No.7「大臣認定の耐力壁」

No.7「大臣認定の耐力壁」

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