優れた素材、確かなデータ
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
木造住宅の壁には、筋かい耐力壁や合板張り耐力壁などの現代構法の壁とともに、土塗り壁や落とし込み板壁などの伝統構法の壁があります。落とし込み板壁は、最大耐力は高いが、初期性能が低いために耐震性の指標である壁倍率が0.6倍と低くなります。
そこで、強度性能が高く色艶等の外観が優れている奈良県産のスギ厚板を使用し、部材と施工方法を改良することにより、施工性が良くかつ耐震性が高い耐力壁を目指しました。その結果、図1に示す耐震性が従来の4.3倍に向上したスギ厚板耐力壁が完成し、壁倍率2.6倍の国土交通大臣の認定を取得しました。
スギ厚板耐力壁の組立作業を図2に示します。まず、土台の溝と柱および梁の片側を開放した溝に本ざね加工した厚さ30×幅150㎜のスギ厚板を前面からはめ込みます。厚板表面の3本の溝に厚さ15× 幅21㎜のアッシュ材の木ダボをはめ込みます。次に、木ダボを隠すように左右と中央および斜め方向に厚さ30× 幅90㎜のスギ補強板を直径4.2×長さ55㎜の木ねじで留め付けます。スギ厚板耐力壁の室内側は、伝統構法の落とし込み板壁と同じ意匠性の優れた真壁となります。
スギ厚板耐力壁は新規な耐力壁ですので、日本建築総合試験所において性能評価試験を行い、国土交通大臣の認定を取得しました。スギ厚板耐力壁の壁倍率の認定値は2.6倍となり、壁倍率が2.0倍の二つ割り筋かい耐力壁および壁倍率が2.5倍の合板張り耐力壁と同等以上の耐震性を有しています(図3)。
大臣認定を取得することにより、県内の建築士、工務店の方々が木造住宅に使用することが可能となりました。