優れた素材、確かなデータ
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
日本の平成26年度の新設一戸建て住宅は88万戸ですが、そのうち木造住宅が49万戸と最も多く、その他は、鉄筋コンクリート造住宅が23万戸、鉄骨造住宅が16万戸です。
このような住宅の構造材等に使われているコンクリート、鉄及びアルミニウムと木材の性能を図1に比べてみました。木材は軽いので、その分強度性能は低くなります。しかし、強さを密度で割った比強度で比較すると、木材は引張強さが鉄の約4倍になり、軽くて強い材料であると言えます。また、木材は熱伝導率が最も低く、木材を大きな断面で使えば、そのままでも断熱性の良い材料になると言えます。
木材は軽いものから重いものまでバラエティに富んでいます。図2に41種類の国産の木材の強さと密度との関係を示します。タンスの材料であるキリが最も軽く、住宅に使われるスギ、ヒノキは比較的軽い木材で、カンナなどの道具に使われるカシは重い木材です。重さは木材の中に繊維がどのくらい詰まっているかで決まります。また、重い木ほど強度性能が高いことが分かります。
スギのヤング係数の全国平均値はE70ですが、奈良県産材の平均値はその1.3倍のE90です。奈良県産材は年輪幅が狭く、密度が高いためにヤング係数も高くなっています。図3に示すように、強度性能の高いE90以上のスギ製材品の比率は全国では36%、全体の1/3ですが、奈良県産材では比率は71%と高く、全体の2/3を占めます。また、奈良県産材のヒノキのヤング係数はE110であり、全国平均値を上回っています。
これまでは目視で製材品の欠点を確認して目視等級を付けていましたが、今は1本1本のヤング係数を測定して強度等級を付けています。実験室では曲げ試験でヤング係数を決定しますが、工場では図4に示すように木材の木口を打撃してヤング係数を決定します。これは木材を打撃するとヤング係数に応じた音が発生することを応用した測定方法です。強度の高い木材は、乾いた良い音がします。強度性能の明確な木材を使用して木造住宅の設計をすれば、地震や台風に強い立派な木造住宅をつくることができます。