優れた素材、確かなデータ
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
※当ページは、2015年12月25日発売の雑誌【「奈良の木」BOOK】掲載のデータです。
丸太から製材された直後の木材には多量の水分が含まれています。乾燥していない木材を製品として使用すると、さまざまな不具合が懸念されます。ここでは、木材乾燥の必要性と、乾燥方法の幾つかについて紹介します。
(1)木材乾燥の必要性
木材を乾燥させる利点として、まずは、「狂いを最小限に抑えられる」ことが挙げられます。木材は、含水率が30%よりも低くなると、含水率の増減に応じて狂い(膨潤、収縮、変形など)が見られます。例えば、図1に示すように、含水率30%以上の製品(未乾燥材)を屋内に置いておくと、製品の含水率は次第に低下し、これに伴う大きな収縮が見られます。これに対して、含水率が20%以下に調節された製品(乾燥材)の収縮は未乾燥材に比べて小さいことがわかります。
このように、あらかじめ乾燥を行い、使用環境に適した含水率(10〜20%程度)にしておくことで狂いを最小限に抑えることができます。そのほか、乾燥を行うことで、強度性能が向上する、カビの発生や腐朽を防ぐ、接着性能が向上するなどの利点も得られます。
(2)木材の乾燥方法
木材の乾燥方法は天然乾燥と人工乾燥に大別されます。天然乾燥は、図2のように木材を桟積みして自然に乾燥する方法です。木材本来の色艶が損なわれないことが最大の長所です。一方で、乾燥の進み方は気象条件に左右され、一般に長い乾燥期間が必要です。人工乾燥は人為的に木材にエネルギーを与えて乾燥する方法です。製材直後の木材を図3のような乾燥機に収容し、機内の温度、湿度、風量を調節して乾燥を進めます。人工乾燥は、比較的短時間で乾燥を行うことができ、製品を計画的に生産できることが最大の長所です。一方で、乾燥機の操作を誤ると、所定の品質が付与されていない製品が生産されてしまう恐れがあります。
例えば、近年普及が進んでいる、温度100°C以上の条件で一定時間乾燥を進める方法(高温乾燥)では、操作を誤ると図4のような「内部割れ」と呼ばれる表面からは確認できない割れを発生させてしまう場合があります。製品に内部割れが存在すると強度低下が心配されますので、このような乾燥材を生産することは避けなければなりません。そのため、乾燥機が導入されている製材工場では人工乾燥技術に関する知識を習得した資格者や技術講習会修了者などを配置し、高いレベルでの品質管理が行われています。