第2回 優秀賞
引き込み障子と小上がり畳の可変性を持たせたリノベーション
新旧の融合を通じて粋な証を残す
マンションの一住戸を全面リノベーションしたこちらの住まい。床には奈良県産の杉フローリング、壁や天井には漆喰塗料が施され、ここがマンションの一室であることを忘れてしまうほどに、自然素材が醸し出すやさしい印象に包まれた空間になっています。
部屋数を確保するために細かく区切られていた以前の間取りは、今回のリノベーションによって「大きなLDK+ワンルーム」へと生まれ変わりました。この大胆な間取り変更がもたらしたのは、室内全体の明るさと、大きな開放感です。窓から入る自然の光は壁に遮られることなく、また白い壁と天井によってやわらかく拡散され、室内の隅々まで明るさが行き渡っています。風の通りが良くなったことも、仕切り壁の少ない設計によるメリットと言えるでしょう。杉材の質感を生かした床に、白い壁・天井というシンプルな仕上げでも、見た目の印象に無機質さを感じないのは造作の建具や家具に桜・栗の木を取り入れているから。これが空間のアクセントとなり、杉材が持つ温かみをより一層感じることができます。
また、玄関や洗面所などの小さな空間は、天井を杉の羽目板で仕上げることで、軽快さの演出と視線の抜けが実現されました。
―――建具・家具の工夫で可変性の高い間取りを実現―――
限られた専有面積をより効率良く生かすため、こちらではすべての建具が引戸・引き込み戸になっています。さらに、建具それぞれの仕様・サイズを変えたこと、また可動式の家具を造作したことで、可変性が高く暮らしやすいオープンな空間が生まれました。以前の間取りでは分散していた収納スペースも、大容量のウォークインクローゼットに集約。
バスルーム・洗面所からキッチンが一直線になっている家事動線も魅力です。さて、マンションのリフォームで無垢の床材を使う際、気になるのは「音の問題」です。表面の堅い無垢材のフローリングを施すと、床面で発生する軽量衝撃音が大きくなるため、しっかりとした遮音対策が必要となります。この課題をクリアするため、こちらでは高性能乾式二重床が採用されました。結果、お施主様はもちろん下階の住民も安心して暮らせる住まいになっています。完成した住まいに対するお施主様のご感想は、「照明の採り方がきれいで、イメージ以上の仕上がり」、「季節ごとの模様替えが簡単にできる、楽しい住まいになった」というもの。マンションでありながらも「木の温かみ」を存分に味わえ、またご家族の暮らしやすさも格段に向上したリノベーションが実現しています。
設計業者 | i think 二級建築士事務所 |
---|---|
施工業者 | 有限会社 池田住宅建設 |
奈良県産材納材業者 | 有限会社 丸岡材木店 |