第2回 最優秀賞
歴史を守り、受け継ぐ家。
- " 将来帰ってくるであろう子・孫のために "
- " 古くなった木材は十津川村の木材で補強 "
- " 窓には樹脂サッシを使うことで断熱性をアップ "
- " 新しい木材も古木風にアレンジ "
- " 4間あった部屋の仕切りを無くしワンフロアの大空間に改装 "
- " 4間あった部屋の仕切りを無くしワンフロアの大空間に改装 "
- " もともと天井にあった板を正方形にカットして腰板に "
- " リビングにある梁は当時の物をそのまま利用 "
- " シンプルですっきりとした収納スペース "
- " あえて不揃いに塗った壁の凹凸が趣きある空間を演出 "
- " 照明を真っ直ぐ取り付けるためにひと工夫されています "
- " 耐震補強の筋交いには強度の強い十津川産材を使用 "
- " 廃材と思われていたふすまをテレビボートの戸に再利用 "
- " 生まれ変わった住まいにお孫さんも大満足のご様子 "
- " (Before) "
- " (Before)古くなった木材は十津川村の木材で補強 "
- " (Before)4間あった部屋の仕切りを無くしワンフロアの大空間に改装 "
- " (Before)リビングにある梁は当時の物をそのまま利用 "
- " (Before)シンプルですっきりとした収納スペース "
- " (Before)廃材と思われていたふすまをテレビボートの戸に再利用 "
将来帰ってくるであろう子・孫のために
ご紹介するのは、築160年を超える立派な佇まいのお宅です。当初は屋根と壁が傷んで雨漏りをしていたので、それを何とかしたいという事でしたが、今回建築と施工を担当した『和』の設計士と話をしているうちに「天井が低くて圧迫感がある」「2階の居間はほとんど使っていない」「孫と一緒に遊べる空間がほしい」など、いろいろと気がかりな点が出てきたので、折角直すなら今は離れて暮らしているお子さんやお孫さんが帰ってきた時、快適に過ごしてもらえる空間にしたいという事となり、歴史あるこの古民家の再生がスタートしました。
まずリフォームする上での問題点が、長年の家の重みや木の劣化によって家が傾いていた事です。軒裏や屋根も傷みが激しかったのでほぼやり替える形になりました。とは言え古民家の趣きを無くさないために、残すところと新しくする部分を慎重に見極めながら進めて行きました。また解体の際も、160年の埃との格闘だったと言います。そうして完成したこちらの紹介作品。外観は当時の趣きをできるだけ残すために極力新しいことはせず、外壁の漆喰を塗り直しました。新しく足した1階の木材は天然塗料を使う事で新品の木であっても古木の雰囲気を再現するなどして、歴史と風格のある佇まいを蘇らせました。
―――新旧の融合を通じて粋な証を残す―――
室内に入ると外観からは想像できないモダンな空間が目の前に広がります。ほとんど使われていなかった2階の4間壁を取り外し、更に天井も取り外した和室は、十津川産無垢材の木目が美しいフローリングに、味のある凹凸の漆喰壁が印象的なワンフロアの大空間へと生まれ変わりました。前の家の面影と趣きも感じられるよう、痛みが少ない構造材はそのまま残し新しい材で補強することで強度面も考慮。ちなみに新しく取り付けた構造材には天然塗料で塗装し、古木風にしていますが、一箇所塗装をしていない部分があります。これには意味があるそうで、同社の松葉社長曰く「古い柱と新しい柱を混ぜることで経年変化を目で感じて頂くためです。全てに塗装をしてしまうとどの柱も同じに見えてしまいますが、こうやって塗装していない柱を残すことで、お施主様が160年続くこの家を再生したんだという証を残したいという想いがこもっているんです。」また、捨てずに残していた天井板。傷みの激しいところや日焼けした箇所は取り除き、正方形にカット。木目が縦横交互になるよう張り合わせオシャレな市松模様に仕上げられた壁の腰板に、お施主様も「捨てるしかないと思っていた天井板を上手に利用して頂いて感激です」と喜ばれていたそうです。
―――家造りを通して歴史を守り愛され続ける住まいに―――
こだわりはまだまだあります。例えばテレビ台。以前使用していたふすまを再利用しました。古いものと新たにつくるものとを上手に組み合わせ、空間になじむ建具も手がけました。またリビングの真ん中にはブランコを設置し、お孫さんが遊べる空間にしたいとのお施主様の想いを形にしています。また、室内壁の漆喰はお施主様ご自身の手によるもの。同社では家づくりにお施主様も参加頂くことで家に対する愛着も湧き、家族の絆=和も強まるとの想いから漆喰塗りをお願いしています。最初は渋々だったお施主様も慣れてくるとだんだん熱が入ってきたそうです。漆喰は塗り方によって様々な表情に変化するのが魅力ですが、壁の凹凸を眺めながら塗った当時の様子を思い出してご家族と話が弾むのが今ではとても嬉しいそうです。
そんな、家づくりにかけるたくさんの想いを間近で見ていたお孫さんのうちの一人が「将来建築家になって古い家の再生をしたい」とおっしゃっているそうです。リフォームを終え、明るく風通しも良く生まれ変わったこちらのお住まい。家づくりを通じて古き良き歴史を守り続ける精神は、お孫さんの代に確かに引き継がれたようです。